『文心雕龍』(ぶんしんちょうりょう)は、中国の六朝時代、特に南朝斉の末から梁の初期に劉勰(りゅうきょう)によって著された、中国で最初の体系的かつ総合的な文学理論書です。この著作は全10巻、50篇から成り立っています。
内容としては、「原道」から「弁騒」の5篇では文学の基本原理を論じ、「明詩」から「書記」の20篇で文体論を展開し、「神思」から「程器」の24篇では修辞の原理や方法について深く探求しています。最後の「序志」では、本書を書くに至った劉勰の動機や背景が語られています。
「文心」とは文を作成する際の心の持ちようや注意点、一方「雕龍」は文の磨き方、すなわち文を美しく飾り立てる技術や工夫を意味します。劉勰は、ただの技巧や飾りだけを追求するのではなく、真の美や文学の精神を重んじるべきだと主張しています。
六朝時代は、文学が独立して発展を遂げた記念碑的な時代とされ、『文心雕龍』はその時代の文学や文化を体系的に捉えた重要な書物として位置づけられています。この時代の他の名著として、鍾嶸(しょうこう)の『詩品』や昭明太子の『文選』序などがあり、これらとともに『文心雕龍』は中国文学評論史上の極めて重要な作品とされています。