『瑜伽師地論』(ゆがしじろん)は、大乗仏教唯識派(瑜伽行派)の重要な文献で、瑜伽行の観法について詳細に説いています。サンスクリット名はヨーガーチャーラ・ブーミで、その意味は「ヨーガ行者の階梯についての論」です。全100巻からなり、唐の玄奘によって漢訳されました。漢訳の系統では弥勒菩薩が説いたとされる一方、チベット伝では無著の著作とされています。無著は世親の兄として知られ、弥勒菩薩の説を聞いてこの著作をしたとも言われています。
内容としては、瑜伽行者が認識する対象(境)、修行、果報を明確にし、阿頼耶識説、三性三無性説、唯識説などのさまざまな問題が詳細に論じられています。この文献は3~4世紀頃のインドの部派仏教や大乗仏教思想の研究において重要な資料となっており、仏教研究のための宝庫とも言える内容を持っています。