『開元天宝遺事』は、中国の五代十国時代の後周の文人、王仁裕が編纂した志怪小説です。内容としては、唐代の玄宗皇帝やその愛妃である楊貴妃、その他の時代の著名人物についての逸話や伝説を集めたもので、多くの神秘的で奇怪な話が含まれています。
この作品は当時の社会、特に宮廷内の風俗や行事、人々の生活様式、信仰などを詳しく描写しており、当時の社会や文化の状況を知るための貴重な資料となっています。また、物語の中には仏教や道教の思想が織り込まれていることから、それらの宗教が当時の社会や人々の生活にどのような影響を及ぼしていたかを理解するのにも役立つ文献となっています。
しかし、『開元天宝遺事』は作品全体が伝世することなく、数篇が散見するのみで、今日では完全な形で読むことはできません。それにもかかわらず、その断片的な内容からも当時の風俗や思想が窺い知れ、古代中国の研究において重要な参考資料となっています。