『児女英雄伝』は、中国清代に文康によって書かれた口語章回小説で、全40回から構成されます。この作品は道光年間(1821~50)に成立し、清末期の大衆文学である武侠小説の一つです。
物語の大筋としては、安公子が罪に陥れられた父の救出のために冒険し、途中で強盗から命の危機に陥るも、女侠として知られる十三妹(実名は何玉鳳)に救われます。後に、安公子は父を救出し、十三妹ともう一人の女性、張金鳳と結婚します。物語は、家族の絆や孝養の精神、さらには安公子の立身出世の道を中心に進行します。
作者文康自身は満州八旗の家系であり、初めは裕福だったものの、後に貧困に陥りました。この作品は彼の晩年に書かれ、初めは写本として広まりましたが、1878年に木活字版として出版されました。
作品は『紅楼夢』に強く影響を受けており、理想的な家庭の姿を描くことを目指しています。特に、生き生きとしたユーモラスな言い回しが特徴で、当時の北京語で書かれているものの、講釈師の口調を模しているため、やや文語的な表現が使用されています。
ヒロインの十三妹は、武侠小説における戦う女性の代表として知られ、彼女の活躍や豪傑ぶりが作中で描かれています。その背景には、唐代伝奇のキャラクターや他の武侠小説のヒロインが参考とされています。
この物語は、日本でも武田泰淳の『十三妹』などに影響を与え、中国や台湾、香港では映画やドラマ、京劇などの演目としても人気があります。