『春秋繁露』(しゅんじゅうはんろ)は、前漢の学者董仲舒が著したとされる書物です。公羊学の立場から『春秋』の精神や思想を解明したこの書は、17巻82篇から成り立っています。しかし、書名の『春秋繁露』は、董仲舒の時代には存在しなかったとされ、後の時代にこの名前で知られるようになりました。
この書は、君主権の強化や徳を尊重する考え方、倫理学的な動機の重視、結果主義の認知、そして権力の理論など、さまざまな論理を含んでいます。特に、礼楽説や天人相関の理論、陰陽と災異説の考察など、漢代の儒教を方向づける要素が多く含まれており、後の時代の学派にも影響を与えました。
成立の経緯を見ると、『漢書』によれば、董仲舒は123篇の著作を持ち、『春秋』に関する複数の著述があったと伝えられています。『春秋繁露』の名前自体は、南朝梁の時代の阮孝緒『七録』で初めて確認されます。
しかしながら、『春秋繁露』の真作性については議論が多いです。過去には欧陽脩や朱熹などが真偽を問う声を上げましたが、『四庫全書総目提要』では「全部が董仲舒の作とは言えないものの、完全な偽作とは考えられない」との見解を示しています。
思想的な面から見ると、『春秋繁露』が五行思想を取り入れているのに対し、『漢書』での董仲舒の災異説は五行を取り入れていないという違いが指摘されています。