『梵網経』は、仏教の大乗経典であり、全2巻から成り立っています。正式な名称は『梵網経盧舎那仏説菩薩心地戒品第十』といい、しばしば「菩薩戒経」とも称されます。上巻では、菩薩の向上心について説かれており、下巻では十重禁戒と四十八軽戒を取り上げ、大乗戒や菩薩戒を詳述しています。この経典は、出家者と在家者の間での区別なく、すべての衆生が仏性の自覚によって戒を受け入れることができると主張しています。
訳者として鳩摩羅什の名が伝えられていますが、実際には5世紀頃の中国で成立したと考えられています。中国や日本ではこの経典を非常に重視し、特に日本では最澄がこの経典を基にして比叡山に大乗戒壇を設立しました。従って、『梵網経』は、大乗仏教における戒の考え方や実践における基盤としての役割を果たしています。