『涅槃経』は、仏教経典の一つで、釈迦の入滅(大般涅槃)を叙述し、その意義を説明する経典類の総称です。略称は『涅槃経』としても知られています。
- 小乗の涅槃経:
- 正式な名称は『大般涅槃経』です。
- 東晋の法顕が418年に訳したものが知られており、この経典は釈迦の入滅前後の事実記録を中心にしています。
- インドでの成立は3世紀末と推定され、原文はパーリ語であったと考えられています。
- 大乗の涅槃経:
- 北本涅槃として知られる曇無讖の訳(40巻本)と、南本涅槃として知られる慧観・慧厳・謝霊運の訳(36巻本)が存在します。
- 後者の南本は、東晋の法顕訳の『大般泥洹経』を参照し、北本を再治したものです。
- これらの経典は、釈迦の入滅前の教説を中心に据えつつ、仏の不滅性(法身常住)や衆生に内在する成仏の可能性(悉有仏性)を強調しています。
また、涅槃経を主とする宗派である涅槃宗が中国で興ったことが知られていますが、日本への直接的な伝来は確認されていません。
概要として、涅槃経は仏教の教えの中で非常に重要な位置を占める経典の一つであり、釈迦の最後の日々とその教え、そしてそれに伴う思想的な深化を知る上で不可欠な文献となっています。