『滄浪詩話』(そうろうしわ)は、中国の宋代に厳羽によって書かれた詩論書で、1巻から成り立っています。この書名は、厳羽の号「滄浪逋客」にちなんでいます。
書の内容は、詩弁・詩体・詩法・詩評・考証の五篇に分かれ、非常に体系的な構成を持つのが特徴です。従来の詩話がより随想的で非体系的だったのに対し、『滄浪詩話』は理論的であり、詩の原理や形式規則、修辞技法、詩人や作品の評価、作品の考証などをきちんと論じています。
厳羽は禅の思想を基に詩を論じ、詩には「別材」「別趣」があると主張しています。また、詩作における「妙悟」という境地を重視し、詩人の真の才能は天賦の才であると説いています。彼は李白や杜甫などの盛唐の詩を特に評価し、その「興趣」を詩の理想として位置づけています。さらに、『楚辞』や漢、魏、晋の詩を高く評価し、時代の流れとともに盛唐の詩を中心とした詩風を提唱しています。
この書は、その後の時代にも影響を与え、明代や清代の詩論にも大きく影響を与えました。特に明の公安派の性霊説や清の王士禎の神韻説は、『滄浪詩話』の延長線上にあると言えます。後の時代にも読まれ続けており、注釈本も多数出版されています。