『詩品』は、中国南北朝時代の梁の鍾嶸(しょうこう)によって編纂された詩論書で、全3巻から成り立っています。もともとの書名は『詩評』とされていましたが、宋代以降『詩品』として広く知られるようになりました。
この書は、漢から梁初までの詩人123人の五言詩を対象に、上・中・下の三品に格づけして批評を行っています。鍾嶸は各詩人の詩の源流や特色を簡潔に論じ、その詩風や詩の由来、強みや弱点を解説しています。時には、同じランクの詩人間の微妙な違いや優劣も評価しています。また、代表作の言及や逸話の紹介を通じて、詩人の人物像や背景を浮き彫りにしています。
序文では、鍾嶸自身の文学論が展開されており、五言詩の重要性や特色、そしてその時代の詩風に対する見解や批評を独自の視点で語っています。特に、五言詩の優位を主張し、当時の流行であった声律重視や典故を過度に使う詩風を批判しています。
『詩品』は、中国の詩論書としては初のものであり、後の文学評論や詩歌の評価において、大きな影響を与えました。特に、劉勰の『文心雕龍』とともに、中国文学評論史上の重要な位置を占めています。日本にも影響を及ぼし、『古今和歌集』の序文にもその足跡が見られるとされています。