『酉陽雑俎』(ゆうようざっそ)は、中国の晩唐代に段成式によって著された随筆集であり、全20巻と続集10巻から成り立っています。成立は860年頃とされ、具体的な年は未詳です。書名の「酉陽」は湖南省沅陵県の小酉山を指し、そこには1000巻の書物を隠した伝説があるとされます。
内容としては、神仙や仏菩薩から怪奇な事件、風俗、動植物、医学、宗教、人事など幅広いテーマが取り上げられています。著者の段成式は、温庭筠との交流があり、また宮中の秘書省校書郎としての経験や、自身の豊富な蔵書に基づく幅広い知識を活かしてこの作品を纏め上げました。特に、唐代の社会、文学、歴史を研究する上で非常に貴重な資料として評価されています。しかし、中には非現実的な記事や小説的な要素も含まれており、それが読者の興味を引く一因ともなっています。
海外に関する伝聞も多く記されており、ソマリアのベルベラ地方を指すとされる記述や、シンデレラに似た伝説なども紹介されています。この随筆集は魯迅の愛読書としても知られ、南方熊楠はプリニウスの『博物誌』と並べて称賛しています。一部の伝世テキストには明代の遺文も含まれていると言われています。