『潜夫論』(せんぷろん)は、中国後漢末期の儒者、王符による10巻36篇から成る著書です。王符は甘粛省の安定郡臨涇に生まれ、妾腹の子としての出生から社会になじむことができず、仕官することはありませんでした。学者として馬融や張衡との交流があり、世俗や政界の問題に憤りを感じて隠居し、この書を著しました。
「潜夫」という言葉は「在野の士」を意味し、その名の通り、王符は官僚としての昇進を果たせなかったが、学問や道徳を重視し、人民教化の重要性を説きました。その中で、時代の社会や政界を批判し、迷信や占いを否定した立場を取っています。
王符の思考は、国の基盤は民であるという孟子の民本思想を元に、天道や天命の考え方に関しては、道家や荀子の学説を引き継ぎながら発展させました。『後漢書』では、王符の思想が王充や仲長統と共通していると認められ、列伝第39にまとめられています。