『秘蔵宝鑰』は空海の著書で、平安前期に天長7年(830年)頃に成立しました。この書は3巻からなり、淳和天皇の勅命によって書かれました。『秘密曼陀羅十住心論』という10巻の勅書を空海自身が要約したもので、『十住心論』は広論と呼ばれ、『秘蔵宝鑰』はその略論とされています。
『秘蔵宝鑰』の中巻には『憂国公子と玄関法師の十四問答』という部分が存在し、これは『十住心論』には含まれていませんが、この問答は『秘蔵宝鑰』中巻の3分の2を占めています。この書の主要な目的は、諸思想の優劣や深浅を定め、真言宗の立場を明らかにすることです。