『捜神記』(そうじんき)は、中国の六朝時代に成立した志怪小説集。東晋の歴史家である干宝(かんぽう)が4世紀に著した20巻からなる作品で、元々は30巻とされているが、逸數し今日の本は後の時代に再編集されたものである。
志怪小説とは、猿や鳥などの動物や仙人、神様を使って語られる短編小説のことを指す。『捜神記』は、神仙、方士、占卜、風神、雷神などの天地の神々、吉兆や凶兆、孝子烈女、妖怪、異婚異産、死者の再生、幽鬼幽界、動物の報恩復仇など、幅広い内容の説話を収録しており、中国の説話の宝庫とも評される。これらの説話は、後世の小説や伝奇に多大な影響を与えている。
著者の干宝は、東晋の政治家・文人として活動し、捜神記を著述する背景には、身近な奇怪な出来事や家族の体験が影響している。特に彼の家族が経験した超常的な出来事、例えば死んだ父が侍女のために食料を持ってきたり、兄が病死した後に蘇ったりするなどの奇異な体験が、本書の執筆のきっかけとされている。
現在伝わる『捜神記』は主に20巻本だが、他にも八巻本や一巻本が存在する。特に八巻本や一巻本は、文中の内容や人名が20巻本とは異なる部分がある。一方、『漢書五行志』との関連で述べられることもあるが、『捜神記』は神や鬼、動植物の怪異に焦点を当てているのに対して、『漢書五行志』は五行思想に基づく天変地異の記録であり、両者のテーマや内容は異なる。
要するに、『捜神記』は、中国古代の奇異や超常の説話を集めた志怪小説集であり、文学史や説話学上で高く評価されている重要な作品である。