無門関(むもんかん)は、中国宋代の禅書で、臨済宗の無門慧開(1183年-1260年)が編纂した。この書は、禅宗の公案や古則(仏教の故事で、禅修行の道しるべとなるもの)を48則紹介しており、各公案に対する評唱(無門の禅的な批評鑑賞)と頌(宗旨を込めた漢詩)が添えられている。これにより、それぞれの公案が一つの節(則)として形成されており、全体として48の節から成る1巻本となっている。
中国自体では特に重要視されず、伝本が途絶えたようであるが、日本には入宋した無本覚心(1207年-1298年)が直接無門慧開に参じ、帰国時に持ち帰ったとされる巻本が伝わっています。この書は江戸時代に注目され、広園寺蔵版をはじめとするいくつかの巻本が存在し、これには無門の序文や後序などの追記が含まれています。
特に、第1則の「趙州狗子」は、禅宗で最も知られた公案の一つであり、無門が月林師観から「犬に仏性はあるか」という問いを受け、答えを見つけるまでの6年間の修行の成果とされています。この公案は、無門が斎鼓の音を聞いて悟りを開いた逸話としても知られています。
総じて、無門関は《碧巌録》、《従容録》、《臨済録》と並び、禅宗で高く尊重される書籍の一つです。