『孔子家語』は、孔子と彼の弟子たちの説話や教えを収録した古典書籍で、『論語』には掲載されていないエピソードが多く含まれています。
この書物の初期の記録は、『漢書』芸文志論語部に27巻の記述として言及されていますが、この27巻版はすぐに失われたと考えられています。
現在伝わる版は、魏の時代の学者王粛が再発見し、注釈を加えた44篇から成るものです。『孔子家語』には、前漢の孔安国が原著を編纂し、孫の孔衍が後序を追加したとの記載があります。
しかしながら、南宋時代から始まった研究によって、王粛が礼制の議論における競争相手、鄭玄派を論破するためにこの書物を偽作したのではないかという疑念が生じました。
しかし、『孔子家語』の内容の多くは『春秋左氏伝』や『礼記』、『説苑』、『史記』などの古典文献と一致するため、王粛が全てを偽作したわけではなく、散逸した文献からの引用もあると考えられます。
1970年代に出土した定州の漢墓からの竹簡『儒家者言』や双古堆の漢簡木牘には、『孔子家語』の内容と一致する部分が見られ、王粛が完全に偽作したという主張に疑問が投げかけられました。この発見により、『孔子家語』の真実性に対する新たな視点がもたらされています。