巻第十の写本(田中本)奈良国立博物館蔵 国宝 平安時代・9世紀 現存最古写本 画像は現存第1紙(応神天皇紀)
『日本書紀』(にほんしょき)は、奈良時代に成立した日本最古の正史とされる歴史書です。全30巻からなり、天地開闢から持統天皇の時代までを漢文・編年体で記述しています。系図1巻が付属していたと伝えられますが、現存していません。
この書は、舎人親王や太安麻侶(おおのやすまろ)らが編纂し、養老4年(720年)に完成したと言われます。古代日本の歴史に関する中核となる史料として、また東アジア史の視点からも高い価値を持つ史書です。神代を扱う初めの2巻を除けば、主に日本の歴代天皇の事績が中心となっています。ただし、例外的に神功皇后や壬申の乱に関する記述も特筆されています。
漢文での記述が中心ですが、万葉仮名を用いた和歌128首が含まれているほか、特定の語意について訓注が施されている箇所もあります。また、この書には和習(倭習)と称される、日本語的特徴や日本語話者の発想に基づく表現が見受けられます。
編纂に当たっては、日本の古記録や百済の系譜に関連する記録、『漢書』『三国志』などの中国史書が参考にされました。特に、百済や朝鮮諸国との関係が詳細に記述されているのも特徴です。
『日本書紀』の研究は日本の学界で熱心に行われており、多様な面からの史料批判や研究が進められています。この史書は『古事記』とともに「記紀」と称され、古代日本の歴史や文学に関する貴重な情報源となっています。