五灯会元は、中国の南宋代に大川普済によって1252年に編纂された禅宗の歴史書です。
この書は「五灯録」と総称される5つの灯史、すなわち『景徳伝灯録』、『天聖広灯録』、『建中靖国続灯録』、『聯灯会要』、『嘉泰普灯録』を総合し、それらを集大成して禅宗の通史としてまとめたものです。
この五灯会元の書名自体、これら5つの灯史を総合することを表現しています。
五灯会元の登場以後、灯史の編纂は清朝まで続きました。
ただし、五灯会元が登場することで、灯史の系譜に新たな意味合いが持たれるようになりました。具体的には、禅宗だけの系譜ではなく、仏教全体の歴史を記述するような書が登場するようになりました。
この変化には、天台宗からの仏教史書『仏祖統紀』への対抗意識が影響しているとされますが、同時に禅宗が仏教界を支える必要がある時代背景も作用していると言われています。
さらに、清代には五灯会元の続編として『五灯会元続略』(遠門浄柱が1651年に編纂)や『五灯全書』(霽崙超永が1693年に編纂)も作成されています。