『呂氏春秋』は、中国の戦国時代末期に秦の呂不韋が多くの学者を集めて共同編纂させた書物で、『呂覧』とも称されます。この書物は26巻160篇から成り立ち、構成は十二紀・八覧・六論となっています。呂氏春秋は、儒家や道家を中心に、名家、法家、墨家、農家、陰陽家などの諸学派の思想が幅広く取り入れられており、雑家の代表的な書物とされています。
内容としては、天文暦学、音楽理論、農学理論などの自然科学的な論説が多く取り上げられ、そのため自然科学史においても非常に重要な位置を占めます。さらに、有名な寓話や説話、例えば「刻舟求剣」なども収録されています。
書名『呂氏春秋』の由来は、1年の12カ月を春夏秋冬に分けた十二紀と、八覧からきています。呂不韋自身は、この書の完成後に一般に公開し、内容に対して一字でも添削ができる者には千金を与えると宣言しました。このエピソードは「一字千金」という言葉の由来としても知られています。
注釈や研究の面では、前近代の中国では後漢の高誘の注釈や清代の畢沅の校注が存在します。日本では、江戸時代や幕末にも呂氏春秋の研究や注釈が行われており、ヘルマン・ヘッセの『ガラス玉遊戯』でも引用されていることから、その影響は非常に広範囲にわたっています。
要するに、『呂氏春秋』は先秦時代の諸学派の思想を網羅的に収録した雑家の代表的書籍であり、古代中国の思想や自然科学の研究において欠かせない重要な文献であると言えます。