老子(ろうし)は、中国春秋時代に活動した伝説的な哲学者で、道家の祖とされています。彼の思想は後に生まれた道教の基盤となり、老子自体は道教の多くの宗派で神格として崇拝されています。彼の著作とされる『道徳経』(または『老子』とも称される)は、道家思想の核となるもので、後の時代に大きな影響を与えました。
老子の本名は李耳で、字はたん、老たんとも呼ばれることがあります。彼は周の時代に文書係や守蔵室吏として仕えており、孔子に礼の道や隠の道を教えたという伝説が存在します。しかしながら、周の衰退を見て西方へと去ることを決意。その際、関所の守りであった尹喜に請われ、『道徳経』を著したとされています。
『史記』の記述や他の伝えられる話によれば、老子の実在や生涯には不明瞭な部分が多く、その実在そのものに疑問を持つ説や、生存時期を変える説、複数の人物の伝説が一人の老子として統合されたという説など、様々な意見や研究が存在します。
『道徳経』には道家思想の核心が記されており、「無為にして為さざるなし」という教えや謙退の精神、自然と調和する考え方などが述べられています。これらの思想は、後世の人々や他の思想家、特に荘子などに引き継がれ、中国文化の中心的な役割を果たし続けました。
以上の内容から、老子は中国哲学や文化において非常に重要な位置を占める人物であり、その教えや伝説は多くの人々に影響を与えてきました。