『文選』(もんぜん)は、中国の詩賦のアンソロジーで、梁の昭明太子蕭統(しょうとう)が編集した詩文選集です。この選集は、古代の周から梁までの時代、約1000年間の詩文を集め、約130人の作者の作品760編を収録しています。それらは39の文体に分類され、各文体内では作者の年代順に配列されています。
『文選』は、賦や詩を中心に選ばれ、その中でも賦56編、詩435首が収録されており、全体の6割以上を占めています。編集の際の基準として、芸術的観点からの評価が重視されました。特に、昭明太子蕭統の序文において、「事は沈思に出でて、義は翰藻(かんそう)に帰す」との方針が示され、内容ある美文が評価されています。
後世、『文選』は文学を志す者の必読書として重視され、多くの注釈が書かれました。唐の李善の注解が特に有名で、これを基に文選学という学問も形成されました。
日本においても『文選』は早くから伝わり、聖徳太子の「憲法十七条」や王朝文学、さらに平安・中世の文学にも大きな影響を与えました。いくつかの貴重な古鈔本が伝えられており、日本の歴史や文化においても重要な位置を占めています。