『詩経』(しきょう、拼音: Shījīng)は、中国最古の詩集として知られ、全305篇から成ります。この詩集は前9世紀から前7世紀にかけての期間に、多岐にわたる作者たちによって書かれました。
具体的には、西周の初期(紀元前11世紀)から東周の初期(紀元前7世紀)にかけての詩が収録されており、周の東遷前後のものが多く含まれています。作者は男女を問わず、農民から貴族、兵士、猟師といった多様な背景を持つ人々とされています。
内容としては、『詩経』は「風」「雅」「頌」の3つの部分に大別されています。
- 「風」は15の「国風」に分かれ、黄河沿いの国々の民謡が中心です。
- 「雅」は「大雅」と「小雅」に分けられ、周の朝廷の宴会で歌われたものや建国伝説を詠んだ長編叙事詩などが含まれます。
- 「頌」は「周頌」「魯頌」「商頌」に分かれ、祖先の廟前で奏せられた神楽とされる詩篇が収められています。
詩の基本的な形式は4言で1句、4句で1章となっており、これが古代音韻研究の端緒ともなったとされます。
伝統的な説としては、孔子が門人の教育のために編纂したと言われていますが、この点については確定的な証拠は存在しません。また、毛氏の伝えたテキスト・解釈が盛行した結果、『詩経』は「毛詩」とも呼ばれるようになりました。
中国の歴史の中で、『詩経』は儒教の経典として絶大な権威を持ち、士大夫層の基本的な教養として長らく学ばれてきました。その成立や背景には複数の学説や見解が存在し、全ての事柄について明確な定論は存在しません。